Depertment of Regional Development

授業紹介

授業紹介

寺田千栄子准教授写真

子どもの問題は、彼らを取り巻く環境を知り、連携しないと解決できません

寺田千栄子 准教授 担当「スクール(学校)ソーシャルワーク論」

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取材日:2022年12月26日(月)2限

取材担当:見舘好隆

どんな授業か?

学校には支援を必要としている子どもがたくさんいます。たとえば、いじめや不登校、貧困、児童虐待など学校教育現場で子どもたちを取り巻く困難な状況は多様化しています。また、そのことに周囲が気づかないままになって、困りごとが悪化していることもあります。このような子どもたちの困難な状況を改善していくことを期待されるのが、学校ソーシャルワークであり、スクールソーシャルワーカー(以下、SSW)は、問題を抱える児童・生徒を取り巻く環境へ働きかけたり、関係機関等との連携・調整を行ったりすることで、課題解決の対応を図っていく専門家です。本授業では、①子どもたちを取り巻く情勢や今日的課題を理解する、②日本において学校教育現場に学校ソーシャルワーカーを導入する意義とその必要性を理解する、③学校ソーシャルワークの発展過程を理解する、④学校ソーシャルワークの実践モデルについて理解することを目的としています。

授業の特徴は?

本授業の特徴は、取材した「おおたに子ども教室」における学生らの活動自体と言えるでしょう。本教室は、冬休みの大谷小学校の教室やグランドをお借りしたPTA主催の「子どもの居場所」。保護者や校長先生、教員、さらに元大谷小学校の先生も参加されていました。この日は10時から始まり、午前中は勉強会、お昼ご飯を食べて、午後は運動会。参加費は普段は無料だが、今回はお昼ご飯代200円のみ。約60名の様々な学年の小学生が集まり、楽しく学び、活動していました。本学の学生はそのコーディネーターとして、子どもたちの輪に入り、対話していました。この日は勉強会&運動会でしたが、その他の日には食育やストレスマネジメントなど企画は多様。自由参加なので学年問わず参加するそうです。

前述した通り、SSWは問題を抱える子どもたちだけと対話しても、問題を解決することはできず、その子供たちを取り巻く環境を理解する必要があります。当然それは座学では不可能であり、4年生の夏休みに学校現場での実習があるのですが、それだけでは「学校」の視点でしか問題を観察することができません。そこで本授業の今日の活動は、学校ではなくPTAが主催するイベントに、本授業履修者を送り込むことで、卒業後、子どもたちを取り巻く多様な環境を理解してもらおうと特別にしつらえた学習環境となります。まさに本授業の最も特筆すべき点でしょう。

この授業でどんな知識やスキルが身に付くのか?

参加していた3年生は語ってくれました。「小学校経由だと、問題がある子と授業中に、先生みたいな感じで対話します。すると児童も取り繕うので、本当の姿が見えてこない。でもPTA主催のイベントだと、お姉さんみたいな感じで接して、気軽に、楽しく、家庭のことなども話してくれるんです。」 まさに寺田先生が目指している、子どもたちを取り巻く複雑な環境を理解することに繋がっていました。なお、本授業は今回のような地域の人や保護者の方々と交流する機会のほか、カウンターパートナー、いわゆる同じ課題に向き合って活躍しているPTAや北九州市役所の教育行政に携わる人、教育委員会(学校の幹部系)に授業に来ていただいてご講演して頂くことで、子どもの問題を複眼的に理解できるように設計されています。

取材者の感想(高校生の皆さんへ)

教員や教育委員会が悪いとする、いじめに関するニュースをよく観る。一方で保護者との関係形成がうまく行かなかった若い教員が心の病になる、早期退職をするニュースも耳にする。どちらか一方が悪いと決めつけられるような単純な問題ではないだろう。その状況の中、寺田先生は少しでも本学群を卒業したSSWが、客観的に状況を見ながら子どもに寄り添いつつ、教職員と保護者のつなぎ役として活躍できるように、授業の工夫をしているのです。SSWに興味がある高校生の皆さんは、本授業で卒業後、学校や保護者に振り回されないSSWになることを目指してはいかがでしょうか。