Depertment of Regional Development

授業紹介

授業紹介

山本浩二准教授写真

車椅子ソフトは、障がい者との共生を育むために生み出されたスポーツ

山本浩二 准教授 担当「地域創生実践Ⅰ・Ⅲ」

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取材日:2022年9月2日(金)6限 


取材担当:見舘好隆

どんな授業か?

本授業は「車椅子ソフトボール(以下、車椅子ソフト)」を通して、障がい者との共生を心と身体全体で学ぶことが目的です。車椅子ソフトは、競技用の車椅子に乗り1チーム10名で行うベースボール型のスポーツで、野外で行われる団体競技では数少ない障がい者スポーツ。発祥はアメリカで、約44年前から全米選手権が行われており、レッドソックスやカブスなどメジャーリーグチームのサポートを受けて運営しているチームもあります。日本では、2012年にアメリカで開催されたワールドシリーズに向けて日本代表チームを結成したのがスタート。2013年には一般社団法人日本車椅子ソフトボール協会が発足、同年には第1回全日本車椅子ソフトボール選手権大会が北海道で行われ、現在では全国22チームが活動し、現在ではパラリンピックの正式種目を目指しています。なお、国際大会ではメンバー全員が障がい者ですが、日本では障がい者と健常者、男性、女性、年齢においても分け隔てなく誰もが一緒に同じフィールドで楽しむことができるバリアフリーなスポーツとして、普及・発展を目指しています。なお、山本先生は日本代表チームの監督に就任し、2022年ワールドシリーズ(シカゴで開催)で優勝しました。

授業の特徴は?

本授業の特徴は、地域の障がい者の皆さんと一緒に行う点に尽きるでしょう。5限から学生は集まって車椅子など備品の準備をし、試合に出る学生は車椅子に乗って練習をはじめ、6限に10名弱の障がい者の皆さんをお迎えし、一緒にストレッチからスタート。そして学生も車椅子に乗って鬼ごっこやキャッチボール、ノックをして身体を慣らしていき、紅白戦が始まります。なおゼミ生は4つのグループ(授業の企画運営、広報活動、大会準備や道具整備、審判や練習企画)に分かれて活動していました。

車椅子ソフトがダイバーシティを育成する仕組みは「クラス分け」。クラス分けとは、選手の障がいレベルでクラスに分けられ、チーム10名で21点以内にする制度(頸椎損傷者またはそれに準ずる上肢に障がいがある場合はクラスQ(0点)、腹筋や背筋の機能が無いもしくは弱く座位バランスが悪い場合はクラスⅠ(1点)など。健常者は3点)。健常者のソフトボールなら当然「最も上手な選手」が選ばれますが、車椅子ソフトは様々な障がいを持つ人でメンバーを組む。つまり、必ずメンバー全員が、メンバーそれぞれの障がいを正しく理解し、戦略を考え、支え合うことが原則となります。あと、車椅子ソフトは、健常者より障がい者の方が上手である点も特徴です。私も一度打席に入って打たせてもらいましたが、打球が内野を越えても1塁に行くまで時間がかかり、簡単にアウトになりました。つまり、車椅子に乗り慣れている人の方が圧倒的に有利。この点も健常者と障がい者が同じ目線で交流できる土台になっていました。また、本日参加されていた元日本代表選手の岸川さんは「今まで接点がゼロだった大学生と練習できること自体が新鮮で楽しい」とおっしゃっていました。地域の障がい者のみなさんが喜んで参加していただき、健常者の大学生がダイバーシティを心の底から理解できる授業であることを実感しました。


この授業でどんな知識やスキルが身に付くのか?

本授業の目的、ダイバーシティが身についていることが良くわかるシーンを、本日何度も見ました。それは、練習試合中に障がい者の選手が転んだ時に、多くの学生が素早くフォローアップしているシーンです。私たちは日常生活において、障がい者を支援することの重要性をわかってはいても、あの速度で支援は普通できません。その転んだ障がい者がどんな障がいをお持ちで、どんなことが苦手で、何を求めているかを知っているからこそできる行動なのです。また、4年生のゼミ生にこの授業での学びを尋ねると、「私は今まで障がい者を支援する対象とみていた。しかし、本授業でそれが覆された。障がい者の皆様と交流することで、身体の機能の一部がうまく動かないから、話すことも含めて苦手なだけで、健常者と変わらないことの方が多いことを知った」と教えてくれました。なお、彼は本授業での学びを活かし、体育会学生専門の採用支援会社へ入社することが決まっており、将来はパラスポーツ経験者の就職を支援する仕事をしたいと語ってくれました。ダイバーシティが心の底から身に付き、その学びが卒業後のキャリアに繋がっていることが良くわかりました。

取材者の感想(高校生の皆さんへ)

2022年4月入学に、車椅子ソフトがしたくて地域創生学群に入学した学生(障がい者)が一人います。彼は卒業後、地元・長崎でチームを作りたいと語ってくれました。私も体験しましたが、これほど健常者と障がい者が同じ目線で試合を楽しみ、かつ共生を学べるスポーツはほとんどありません。もっと車椅子ソフトが日本全国に普及すれば、もっと地域にダイバーシティが浸透するでしょう。皆さんも地元に車椅子ソフトのチームを作ってみてはどうでしょうか。前述した通り、車椅子ソフトは2028年開催のロサンゼルス・パラリンピックの正式種目になる可能性があり、その代表チームの監督は山本先生かもしれません。是非、本授業を見学に来てください。山本先生のゼミ生のみんなもきっと大歓迎してくれますよ。